Eroica HISPANIA参戦記 ~後編~
スペイン北部で開催されたEroica HISPANIA参戦記 ライド編
6月5日(日)ライド当日
再び時差の力を借りて、5時前に起床。
少し仕事をして、6時半に出発。車に荷物を積み込む
ノーパンクを祈りつつ準備
昨日行ったセニセロの街に再度向かう。
到着するとまだ少しひんやりして、人も少ない。 自転車を準備。
ゼッケンは、藁で結びつける。 パンクしないよう、空気をしっかりと入れる。
そもそもチューブラータイヤを交換したことないのでパンクは絶対にしたくない。
いざスタートへ
3人準備を完了し、会場へ向かう。
エントリーしたミドルコース112㎞は7時半スタート予定。
7時20分くらいに、スタート地点に向かうが人が少ない。 日本で参加した時のように、スタート時間を間違えているのか、そもそも人が少ないのか?少し不安になる。
時間は本当に合っているのだろうか、と不安になっていたら人が少しずつ増えてきた。
レギュレーションアウト、まさかのDNS?
スタートのハンコをもらう際、オーガナイザーのおっちゃんから服装のチェックが入る。
ヴィンテージスタイルがレギュレーションのこのイベントで、一応ヴィンテージをリスペクトしていればよいとの認識だったが、 ライクラのショーツや、ナイロンのウインドブレーカー等はダメだったようだ。 ノープロミーテ?らしきことを指さしながら言われる。
どうやらヴィンテージじゃないからダメだと言われているらしい。
このまま走れないのか!?と緊張が走ったが、来年からはよろしくねとあっさり通してくれる。
みなそれぞれ、素敵なヴィンテージスタイル。
でもライクラの人もいて、結構今時スタイルの人もいるからやはり自由なのだろう。
本当にスタートするのか不安に…。
それにしても人が少ないが、本当に7時半にスタートするのか。
と、思っていたら続々と人が集まり始める。
ゼッケンから察するに800人くらいはエントリーしている様子。
テンションがあがってきた。
街の広場で開始の合図を告げる花火が打ち上げられ、10分遅れの7時40分頃スタート。
一斉にヴィンテージスタイルの自転車と服装をした人たちがスタートしていく。
いざスタート、いきなりのダート
そのまま気持ちのよい坂を下り、ブドウ畑の中の道に。
いきなりダートがスタート。
未舗装路を保全する意味もあるこのエロイカのイベントでは、30%以上がダートとの事。 にしては、今まで参加したエロイカブリタニア(イギリス)、英雄(日本)のどのコースよりもダートに入るのが早い。
しかも少し大きめの石がゴロゴロしていてパンクが怖い。
でも景色は最高だ。 目の前のパンクの怖さからどんどん視線が上がっていき、いいラインが取れるようになってくる。
少し走ると、緩やかな登り。
自転車を降りて押す人もいるが、まだまだ元気だ。
テントが見えてきた。エイドステーションだ。
パンやクッキー、果物、コッパが並ぶ。チェックポイントのスタンプはここにはなさそう。
右か左か…
地図にも出ていない補給コーナーだが、10㎞地点のよう。
その先で分岐点の矢印が左右に分かれる。 ミドルコースの色だと右だが、何かおかしい。 みんなどっちだろうとちょっと悩む。
が、そこにいたおっちゃん曰くどうやら左のようだ。
そのまままた気持ちのよい道を走る。 道は、小さな村を抜けて(教会があるのがうれしい)はまたブドウ畑という繰り返し。 途中できれいな川を越える
ヨーロッパは空の青がきれいだ。
ダートの石ころもだんだん大きくなって轍も深くなってきている気がする。
遮断機のない踏切を渡る。電車はめったにこないのかと思っていたら走っていたので、怖いのでちゃんと右左みてわたる。
赤い看板に白地の矢印を目印にひたすら進んでいく。
間で村をいくつか抜ける。
必ず村には一つ教会がありきれいだ。 キリスト教ではないが、心が落ち着くし、町に必ず一つあり、町の人がそこに集まると思うとなんかいいなと思う。
赤い看板と地面の黄色い矢印を目指して迷路のような町を抜ける。
黄色い矢印が間違った方向を指していて、無理やり正しい方向に塗りつぶされ直されていたりとちょっと不安。
村を抜けると再びダートと畑。
道が永遠と続く。 体感的には40㎞くらいは走っている感じだが、ダートが長く思ったよりも進んでいない。 ここでまだ20㎞もいっていない。
しばらく走っていると、次のエイドステーション。
隣の山の上の町が見えてきれいだ。
またスタンプを押すコーナーがないので仮のエイドステーションかと思ったら、机等は無くこの兄ちゃんが押してくれている様子。
危うくスタンプを押し忘れれるところだった。
マシントラブル。パンクではなくプーリーが彼方へ…。
そして再スタート。
海外の教会の雰囲気が好きなので村の一つ一つの真ん中に必ず教会があるのがうれし
と、さらに遠くを見てみると、大きな山の頂上にものすごいサイズの城なのか教会なのか分からない何かがある。
山の頂上がまるまる建造物に見えるそれは、まるで要塞のよう。
と、ここで、一緒に行っていた石川さんの自転車のプーリーが吹っ飛ぶアクシデント発生。 長いダートの振動で緩んでいたネジがそのまま外れた様子。
このアップダウンの激しいコースの中で、変速が効かなくなりシングルスピード化。
要塞のような村の様子が明らかに
何とか、リペアが完了し、そのまましばらく一緒に走りながら景色を楽しむ。
さっきまで彼方に見えていた要塞のような村の様子がだんだんと明らかになってくる。
どうやら巨大な教会が頂上に据えられた村のようだ。
その山の向かいの山を下り、だんだんとその山に近づいていく。
山を下りきったところで、立派な石橋に。
記念撮影をしながら、目の前にそびえたつ山というか岸壁のようなその村の様子を見て感動する。
そして、次の瞬間これを登らさせられるのかと気づく。
シングルスピード化した石川さんと共にアタックするが、徐々に距離が開いていく。
マラガから来たというこのスペイン人についていく。
自分もきつい。
何とか下りずに蛇行しながら登り切っていく。
何とか登りきって景色を見ると絶景。あの石橋から登ったのかと思うと達成感がある。
山頂の石垣を見ながらせっかくなら、教会も見たいなあと思っていたら、その教会がどうやらエイドステーションのようだ。
スタンプ用の紙に書いてある、サン・ビセンテ デ・ラ・ソンシエラという長い名前の街。
水を飲んで、果物を食べて、しばし教会を散策。
本当に要塞のような教会で、しっかりと守られており、目の前に絶景が広がる。物見台のようなところから景色をのぞくと、絶景が切り取られてまるで絵のよう。
教会の城壁をうろうろしていると、石川さんが合流、しばし一緒に探検。
どうやら大聖堂の中にも入れるよう。
ひんやりと静まり返った教会の中は心が落ち着き、ずっと休憩していたくなる。
が、体に鞭を打ち、次なるスタートに。
そして、激坂を今度は下る。
頑張って上った標高は一瞬にしてマイナスに。
その村をぐるりと見ながら後にしていく。
登った反対の方が崖になっており、下る反対側は緩やかな丘が続く
が、距離はここでまだ30㎞もいっていない。
時速10㎞くらいのペースだ。まあまあ疲れているがこの先が思いやられる。
いくつかの村を越えていく。それにしても気持ちがよい。
そして次の補給ステーションに。メロンに、ハムをのせてうれしい。
石川さんとははぐれてしまった。
さっきのマラガから来た人が心配してくれている。
ここもまた山頂に町があり、広場の真ん中には噴水が。
石川さんを待ちながら何やら気になる門が見えるのでくぐってみる。
門をくぐると、迷路のような町が広がっていた。
音楽を演奏する人、ワインを飲む人と穏やかな日差しと、石壁の影でゆったりとした時間が流れている。
永遠と続く、アップダウン。
山頂に村を見つけては登り、また下る。
スペイン人は登りは遅いが下りがものすごく早い。
続くヘアピンで完全に置いていかれる。
だんだんとお腹がすいてきて、あの村にいけば補給ステーションかな?と思い頑張って山を登り、何もない事に気づいてがっかりしては山を下るの繰り返し。
下ってきた村を振り返っては、その先にある村に期待を寄せる。
崖が切り立った山脈が見える。
このバスク地方は、ピレネー山脈沿いにフランス側とスペイン側にそれぞれバスク自治州がぐるりと周っていて独特な文化を築いているらしい。
羊アトラクションありのエロイカスペイン
だんだんと疲れてきて登りは自転車を降りて自転車を押し始める。
あまりのつらさにぶつぶつ言いながら登っていると、何やら先の道がふさがっている。
なんだあれは…。
羊だ。
大量の羊が犬に追われながら道をふさいでいる。
恐る恐る突っ切るとちゃんと道を開けてくれた。
羊飼いのおっちゃんが何か笑顔で話しかけてきてくれる。
疲れて遅くなったが、遅くなったからこそこんなうれしいアクシデントにも出会えるのだなと思った。 後で、他の二人に自慢していたら三人ともこのアクシデントに出会って、それぞれが自分だけがこのラッキーな現象に遭遇したと思っていた様子。
毎回出てくる、コース内のアトラクションの一つという事で落ち着く。
それにしてもきつい。先の見えない上り坂を越えると、また下りなのか、エイドステーションが見えるのか…。
しばらくすると見慣れた後姿が…森さんだ。
向こうもこっちに気づいたようで手を振ってくれる。
疲れ果て、心も弱くなっている時に仲間を見つけるとホッとする。
ここからはしばし二人で走る。というかほとんど押している。水も尽きかけている。
体力の限界、腹ペコで迎えたエイドステーション
そして、ようやく腹ペコのままエイドステーションに到着。
とりあえずメロンを食べて、パンを4個くらい食べて、水もがぶのみ。腹がタプタプに。
皆さすがに疲れているのか、ここでのんびりと時間を過ごす。
10分ほど昼寝もして体に鞭をうちまた走り始める。
帰り道にログローニョ
ここでログローニョの標識。
見慣れた町の名前にどこかホッとする。
遠出をした時に、家の地名が出てきた時のホッとした感じに似ている。
石川さんの姿はまだ見えない。
ログローニョの町で、昨日行ったカフェに立ち寄り、しばしカフェタイム。 あとはラストスパート、ログローニョの街を抜け、いざセニセロへ。
車で20㎞あった事は頭から消し去り、もくもくとペダルを踏む。 さっきの休憩が効いたのか、少しだけ登れるようになった。 でも永遠と続く見慣れた風景。
セニセロの町まであと少し、途中電車とバトルしつつ
そうこうしているうちに、見慣れた風景…セニセロの町に。
時間は18時半。15時には帰ってこれると考えていた自分の甘さに苦笑い。
町に入ると、町の人が「あと少しだ!がんばれ!」(想像)と声をかけてくれる。
ゴールでは、皆が拍手で出迎えてくれる。
エロイカブラザーズで記念撮影。 この後、市長やMr.エロイカ ルチアーノさんもいたので一緒に記念撮影。
続々と200㎞を走り終わった英雄(エロイカ)達が帰ってきては、祝福されている。
いつかは、英雄になりたいなと思いを馳せつつ、次々と帰ってきては称えられる英雄たちを見つつ、ゴールで配られたスパークリングワインを飲む
一方、はぐれた石川さんが帰ってこない…。
20時を周り、いよいよ心配になったところで本部の人に問いあわせ。
どうやらログローニョの町で一人日本人が力尽き、救護カーに搬送されてセニセロに向かっているとの事。
プーリーがなくなりシングルスピードであのつらいアップダウンをクリヤしてログローニョまでたどりついたのかと想像してすごい人だな…と思った。
また、来年?いつの日かエロイカに参戦したいと強く心に刻んでエロイカトリオでセニセロの町を後にする。
余韻は続く…またいつか
なんとなく帰る日をさみしく思いつつ、再び自転車をバッグにパッキング。
ホテルの駐車場で自転車を積み込むのに四苦八苦していると、セキュリティーのおっちゃんが近づいてくる。 怒られるような事はしていないはずだが… エロイカに参加していたのか?と聞いてくる。
やはりエロイカはこのログローニョにも結構知られているのかと思っていると、 昨日、写真撮ってもらったけど覚えてないか?と。
まさかのエロイカ参加者のおっちゃんで、携帯で写真を見せてもらうとそこにはクラシックジャージに、ヴィンテージバイクを前にしたおっちゃんが写っていた。
おっちゃんに見送られ、過去に参加したエロイカの中で最も過酷だった事はもう忘れて、またいつかこの場所に帰ってこれたらいいなと思いつつ、さようならまた今度。
Eroica 参戦記