パワーメーター活用最前線
パワートレーニングの 第一人者 ピークス コーチンググループ 中田 尚志さんが
パワーメーターの”今”をご紹介
パワーメーターとは?
パワーメーターはライダーの出力を測ることができるデバイスです。 ジムに置いてあるステーショナリーバイクをご覧になったことがある方も多いと思います。パワーや消費カロリーが表示出来る固定バイクです。パワーメーターをつけることで同様の機能を手持ちのロードバイクに付けることができます。 いわば手持ちのバイクを”走るステーショナリー・バイク”にできるわけです。また近年はパワーメーターと接続してバーチャル空間でグループライドを楽しめるソフトウエアも出てきました。
パワーメーターで自身のパワーを知るだけでなくライディングをより楽しむツールとして活用することができるようになりました。
パワーメーターで何ができる?
高性能なバイク・コンピュータと組み合わせれば現在のパワーや、平均パワーやノーマライズド・パワー(もし一定ペースで走ったら何ワットになったかを表す)をリアルタイムで知ることができますから、ロング・トライアスロンやロングライドのペース配分に活用することもできます。
またパワー計測だけでなく、自身の生み出したエネルギー量(kJ)から消費カロリー(kcal)を 知ることができますからエネルギー収支をかなり正確に知ることができます。 またFTPと呼ばれる有酸素能力を表す指標を知ることで、体にどれぐらいのストレスを与えているのか(TSS)、またTSSの積み重ねをみることでオーバートレーニングに陥らないように管理をすることもできます。
パワーメーターの選び方
精度・耐久性・目的・予算に合わせて選ぶといでしょう。 パワーメーターは精度と耐久性を重要視しつつ、トレーニングを管理する、レースに使う、ズイフトに使うなどメインの目的を設定して選んでいくと良いでしょう。 コストも重要です。長期的なパワーの変遷を測りたい場合は精度と耐久性に優れた2INPOWERDM, 複数のバイクに付ける場合はコストパフォーマンスに優れたINPOWER DM、クランク長を変更する可能性がある場合はINSPIDERなど、目的と予算のバランスが取れたモデルを選びましょう。
ツール・ド・フランスをで使われるパワークランク ROTOR 2IN POWER DM
パワーメーターに求める性能
パワーメーターに求める性能は2点。精度と耐久性です。 パワーメーターは内蔵されたひずみゲージと加速度センサーからパワーを計測します。そのデータをバイク・コンピューターに1秒間に4回送信します。これらのプロセスの中で正確にそしてデータを落とすこと無く送信できるかがパワーメーターの優劣を決定づけます。
ちなみにツール・ド・フランスをROTOR 2IN POWERで走ったある選手のデータは3週間90時間以上走った中でスパイク(エラー・データ)やデータの欠損がありませんでした。 気象条件や標高差、TVカメラや他の通信機器などの電波に囲まれているプロトンでこれを達成できたのは高い技術力の証明です。
ハイエンドの世界
かつて自転車ロードレースはスポーツ科学から立ち遅れたスポーツと言われていました。競技時間が長いためにパフォーマンスを測定するのが難しかったからです。 しかしパワーメーターの発明により、自転車ロードレースはあらゆるエンデュランス・スポーツの中で最もトレーニング理論の進んだ競技と言われるようになりました。自転車の場合、ペダルにかかる力を測定できれば人間が生み出すパワーや消費カロリーをかなり正確に知ることができます。そのため、他の競技よりも定量化が簡単にできるわけです。
パワーメーターの活用例
1. レースの現場では
更に高性能なバイク・コンピュータと組み合わせることでパワーをはじめスピード・走行距離・走行時間・心拍・ケイデンス・気温・GPSデータなどを1秒ごとに記録することができます。 それらのデータからライダーの体にかかるストレスや疲労度を多角的に分析することが可能です。 ツール・ド・フランスを走るプロの世界ではデータをクラウド上で管理することで、コーチングやレース戦略に活用しています。 そしてそれは我々アマチュア・サイクリストでも同様に利用可能です。
2. データを活用する
パワーデータを毎日蓄積していくことで、様々な情報を得ることができます。
1.どれぐらいの時間、どれぐらいのパワーを出せるのか?
2. どれぐらいの練習量がこなせるのか?
3. 1.2から現在の調子を知る
4. この先どれぐらいパワーが伸びていくかが予想できる
3.ペダリング解析
2INPOWER DMをANT+のドングルを介してパソコンに接続すると、クランクの角度、トルク、パワーなどの各データを1秒間に最大47回転送することができます。 データはMSエクセルなどの表計算ソフトにインポートできます。それによりペダリングを詳細に知ることができます。
上の図は2INPOWER DMからパソコンに取り込んだデータを加工したものです。
上に伸びるオレンジと青の山は踏み込み時のトルクです。一方で下向きのくぼみは、踏み込みを邪魔するネガティブ方向のトルクです。 踏み込んだ力によって反対側の足が強制的に持ち上げられている為にネガティブ方向のトルクが生まれます。踏み込んだ力にブレーキをかけてしまっているので、極力少ないほうが好ましいと言えます。
これらのデータから単にパワーを測るだけでなく、ペダリングの効率化を図る解析までを行うことができます。
二人共FTPは300Wですが、ライダーAは踏み込みのパワーが350Wもあるに関わらず、ネガティブが50Wもあるため出力は300Wにとどまっています。ライダーAがパワーアップするには出力を増やすよりもネガティブを減らす=ペダリングを改善する方が有効です。
一方ライダーBはネガティブが比較的少ないですから出力そのものを上げる必要があります。 このように同じFTPの選手でも、ペダリング解析の結果で強化の方針は変わってくるわけです。 今やパワーメーターは走るステーショナリーバイクから、走るラボ(研究所)へと進化を遂げています。
中田 尚志 さん
(ピークス・コーチンググループ・ジャパン)
国内外でのレース経験があり、幅広い層のサイクリストのコーチングを行っている国内パワートレーニングの第一人者。
今回、様々なノウハウを駆使して脂肪が燃えやすいトレーニング方法を提案してくれる
ピークス・コーチンググループ・ジャパン