ENVE JOURNAL Vol.6 最大タイヤ空気圧 – その意味とは
充填とタイヤの空気圧は、どのカテゴリーのサイクリストも興味のある話題。マウンテンバイカーはエアの保持力、低圧によるトラクション、安心感、スピードの向上を実現するべく、チューブレスシステムをすぐに導入しました。一方のグラベルやロードサイクリストも、マウンテンバイカーの後に続きました。
あなたの走り方や走る地形に理想の空気圧を見つけるには、自らの力で探し出す必要があります。しかし、どのタイヤにも記載されている「最大空気圧」は無視してはならず、誰かにとっての「理想的」な空気圧ではありません。
ほとんどのタイヤブランドが定める最大空気圧とは、タイヤを安全に保持するための空気圧のこと。その空気圧に設定して走ることが適正である、という意味では決してありません。空気を入れすぎたタイヤは振動をゴツゴツと体に伝え、路面との接触面積が減ることからトラクションは大幅に低下します。同様に、最大空気圧に設定されたタイヤはビードに損傷が及びがちです。
自動車業界では、タイヤメーカーではなく自動車会社が空気圧を決定します。なぜタイヤメーカーではないのかと思う方もいるでしょう。それは、自動車会社が車重、エンジン、サスペンション、走行特性を考慮して、燃費だけでなく操作性やブレーキング性に最も優れた空気圧を決定しているからです。自動車会社はこの空気圧を純正タイヤの仕様に採用し、車両の走りの微調整や改良を行っているのです。
サイクリング業界では、リムメーカーが最終的には空気圧を決定するべきです。どんな種類と幅のリムでタイヤをどのように使うかがより鮮明にわかっているため、リムメーカーこそが転がり抵抗、トラクション、快適性、安心感に最も優れる空気圧を提供できます。リムメーカーによるこの推奨空気圧は、一般的にタイヤの最大空気圧よりはるかに低い数値です。そうあるべきなのには理由があります。自動車業界と同様、ライダーの体重やリムの種類を把握することで、それぞれのバイクやライダーにとっての走りを微調整できるからです。
バイクのタイヤ業界は、ホイールメーカーの革新の速度にまだまだ追いつけていません。多くのホイールメーカーがより高い精度や、オールロードおよびグラベルカテゴリーに向けたハイボリュームタイヤのチューブレス性能を求めて「フックレス」タイプのビードに移行しているのはその一例です。
ENVEがSES ARおよびG Seriesでフックレスに移行した理由は、より厳しい公差でリムをモールド製造できるため。これが結果的に、より簡単にチューブレス化でき、エアの保持力に優れ、最終的にはタイヤの保持と安全性の向上につながりました。
話を現在に進めましょう。正しく製造されたチューブレスタイヤは、ビードシート径が正確に定義され、リムのビードシート径を超えてはならないのが理想です。チューブレスシステムでは、リムのビードシート(リム中央の深溝両側にある、タイヤが収まる部位)でタイヤとリム同士が密閉します。
フックビードもシールとして機能するという主張はありますが、タイヤがビードシート径より伸びてフックビードで密閉することになれば、タイヤを横方向に支えるものがなくなり、タイヤが側面から圧迫されると空気がいきなり漏れてしまいます。このため、マウンテンバイク業界では、5年前にフックレス化に移行したのです。
タイヤに話を戻しましょう。以上の理由から、ENVEはフックレスホイールには、安全でハイパフォーマンスなライドを体験できるよう、チューブレスタイヤのみを使用するよう推奨しています。ここで、タイヤの最大空気圧が影響し始めます。リムとタイヤメーカーの最大空気圧を超えないよう注意することが重要で、両者の最大値が異なるようであれば、どちらか低い方に必ず従いましょう。これにより、リムのビードシートでタイヤを確実に密閉することができます。理想の空気圧 – タイヤとリムの最大空気圧よりはるかに低くなることが通常 – を見つけることで、効率、トラクション、信頼性に優れたライドを行い、自信に満ちた走りを楽しめるようになります。
ENVE各ホイールの推奨タイヤ空気圧をぜひご確認ください。
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